位置抑制仮説

GRITのコーチ岡崎です。
これまで6年間、育成年代の選手たちにバスケットボールコーチとして、バスケットボール教室を600回以上開催、400人以上の選手のコーチやレッスンを行ってきました。
シュートにおける視野についてです。シュートに関する動作解析を始めてから、『目』ついても分析してきました。多くの選手を観察していると、8割以上の選手(トップ選手も含む)がシュート動作開始時に目を閉じていることに気がつきました。

ジョーダンの目を閉じた
フリースロー
(意図して閉じた場面です。)

また、育成年代の Low Shoot においては、ボールや腕が目の前にきて、リングが見えないのではないかという疑問を上げる方もいます。実際にこのタイミングでは目を閉じています。

ローシュートのインパクトの瞬間

先に結論を上げると、以下の二つになります。

1.シュート動作開始時は目を閉じて良い。
2.シュート動作開始後はリングを見続ける必要はない


これは『位置抑制仮説』ということで説明されます。
これらは研究としては少し古く、1996年にカナダのカルガリー大学のVickers氏らの論文です。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov › pubmed
研究によるとフリースローの成功率が高い選手は、動作開始後には78%の確率で「瞬き」や「腕」などによってリングを(無意識的に)隠しているが、成功率の低い選手は,そのような特徴が9%程度しか見られないことを報告しています。この現象は,「位置抑制仮説」で説明されており、動作開始前に獲得した情報に動作開始後の視覚情報(動作によりブレた映像)が干渉することを避けるために行われていると考えられています。


NBAでもステファンカリーやダーク・ノビツキーといったシュートの名手の目線も、シュートのリリース後はすぐにボールを追っていることがわかるかと思います。

Luka Doncic & Dirk Nowitzki warming up


ボールに目線が移るのは、動作開始後のブレた情報を入れないといった目的だけではなく、シュート軌道を把握することであったり、方向感など、他の情報を入れて自身のシュートの調整につなげていると考えています。


以上より、まとめさせていただくと、シュート動作開始後は、無理にリング(ターゲット)を見続ける必要はないということ、
裏返しになりますが、動作開始までの視野の取り方が重要であるということがわかります。